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羇旅にして作りき(5)
近江の海 湊は八十ち いづくにか 君が舟泊て 草結びけむ
(巻7-1169)
近江の海の数も知れない港のどこで、貴方は舟を泊めて、一夜の宿りをされたのでしょうか。
男を待つ女の歌。旅先の男が帰って来ない。何か事故でもあったのか、あるいは、数知れない港のどこかに、新しい妻がいるのではないか、様々な不安に満ちた歌。
楽波の 連庫山に 雲居れば 雨そ降るちふ 帰り来我が背
(巻7-1170)
楽波の連庫山に雲がかかると、雨が降ると言われています。
貴方は、早く帰ってきてください。
これも旅先の男を待つ歌。楽波は近江の都があった地。




