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羇旅にして作りき(2)
的形の 湊の洲鳥 波立てや 妻呼び立てて 辺に近づくも
(巻7-1162)
※的形:伊勢国多毛郡
的形の港の洲に鳥が群れています。沖の波が高くなってきたからでしょうか。
妻を呼び立てながら、岸に近づいて来ます。
旅先で妻鳥を呼ぶ鳥を見て、自分はそんなことは出来ない状況に気がついたのか。
無理とはわかっていても、声をかければ寄って来る妻がいて欲しい。
旅先の鳥の動きを詠みながら、その心は家に残してきた妻を思う。
年魚市潟 潮干にけらし 知多の浦に 朝漕ぐ舟も 沖に寄る見ゆ
(巻7-1163)
年魚市潟は潮が引いたようです。知多の浦で、朝漕いでいた舟は、沖の方に離れて行きます。
伊勢湾奥の年魚市潟の潮干を思い浮かべながら、目の前に広がる知多の浦の情景を詠んでいる。




