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摂津にして作りき(6)
名児の海の 朝明のなごり 今日もかも 磯の浦みに 乱れてあるらむ
(巻7-1155)
名児の海で夜明けに見た潮だまりは、今日もまた、磯の浦のあちらこちらで、ざわめいているだろうか。
住吉の 遠里小野の 真榛持ち 摺れる衣の 盛り過ぎゆく
(巻7-1156)
※遠里小野:現大阪市住吉区遠里小野町と堺市遠里小野町。近世に流路変更された大和川により南北に分断されている。
※榛:はんのき。その実や樹皮を染料にする。
住吉の遠里小野の榛で摺染めにした衣が、少しずつ色があせてきています。
いずれも、住吉への旅を追想する歌。
夜明けの出発なのか、何気ない磯の潮だまりと、そこで染めた衣が色あせてくることを寂しく思う。
確かに旅先で大騒ぎした記憶も楽しいけれど、何気なく見た風景やそこで求めた衣などにも、気持ちは残る。




