河を詠みき(7)
はね葛 今する妹を うら若み いざ率川の 音のさやけき
(巻7-1112)
この小川 霧ぞ結べる たぎちゆく 走り井の上に 言挙げせでども
(巻7-1113)
※率川は、春日山から奈良を西流する川。
はね葛を今着けたばかりの若さあふれる可愛い貴方を、さあ遊ぼうと誘ってみたいと思うような、いざという名の率川の川音は、本当にさらさらと美しいのです。
この小川に、白い霧が立ち込めています。勢いよくたぎり落ちる走り井のところで、言挙げをしたわけでもないのですが。
一首めは、髪飾りをつけるお年頃になったばかりの美少女を、美しい音を立てて流れる率川で、さあ遊びましょうとデートに誘う、実に若さがあふれる歌。
二首目の「言挙げ」は、言葉を発することにより、あるいは手を打ったりすると、水や湯が噴出するという民族信仰、邪神を鎮めるための呪術的儀礼。
しかし、万葉の時代は、自己主張が強いとみなされ、忌むべき行為とされた。
そんなことをしなくても、自然に霧が湧き起こり立ちこもる自然の力を讃える。




