月を詠みき(4)
まそ鏡 照るべき月を 白たへの 雲が隠せる 天つ霧かも
(巻7-1079)
ひさかたの 天照る月は 神代にか 出でかへるらむ 年は経につつ
(巻7-1080)
ぬばたまの 夜渡る月を おもしろみ 我が居る袖に 露そ置きにける
(巻7-1081)
水底の 玉さへさやに 見つべくも 照る月夜かも 夜のふけ行けば
(巻7-1082)
そろそろ照り出してもよさそうな月なのに、白い雲が隠しているのでしょうか。それとも天に立つ霧が隠しているのでしょうか。
ようやく空に照り始めた月は、神代の昔に戻って出直してきたのでしょうか。年は返ることなく過ぎてきているのに。
夜空を渡る月が、あまりにも素晴らしいので、見続けた私の袖が露で濡れてしましました。
水の底の玉まで、しっかりと見えてしまうような今夜の月となりました。夜がしだいに更けてまいりますと。
これも、前回の歌意の順と同じ。
一首目は、月の出を待つ歌。なかなか出てこない焦燥感を詠む。
二首目は、やがて白いものを取り払い、照り始めた月。あまりにも待ち続けたので、神代にでも戻られたのかと、少々の恨み言か。
三首目は、あまりの美しさに見とれて時を忘れてしまうようす。
四首目は、水底はおそらく宴を行う池の底。池の底に玉を沈めて月光で照らして楽しむ趣向があったのかもしれない。




