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月を詠みき(1)
常さはね 思はぬものを この月の 過ぎ隠まらく 惜しき宵かも
(巻7-1069)
ますらをの 弓末振り起こし 猟高の 野辺さへ清く 照る月夜かも
(巻7-1070)
いつもは、それほど気にはしないけれど、この月が隠れて見えなくなってしまうのが、実に惜しい今宵なのです。
ますらおが、弓の先を振り立て狩をする猟高の野辺にまで、清らかに月の光が照らす夜となりました。
「月を詠む」は、出典は未詳、18首。
最初の二首を訳した。
月夜の宴なのか、独詠なのか、どちらであっても、月の歌は不思議に美しい。
「惜しき宵かも」と「照る月夜かも」と、同じ形で対比して結んでいるので、「宵と月」で、一組の歌としてとらえるのが妥当。




