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難波宮に幸したまひし時の歌六首(4)
児らしあらば 二人聞かむを 沖つ渚に 鳴くなる鶴の 暁の声
(巻6-1000)
右の一首は、守部王の作なり。
妻と一緒ならば、二人して聞くことが出来るのに、あの沖の洲で鳴いている鶴の明け方の声を。
後世の新古今集に見られるような名詞止めで、歌を詠んでいる。
ただ、時々難解な技術を駆使する新古今と異なり、実に大らかで重厚さまで感じる。
これも聖武天皇の難波行幸に付き添った折の作となるけれど、当の聖武天皇が、どんな顔をして、この歌を聞いたのか、実に興味がひかれるところである。




