313/1385
雨隠もる 三笠の山を 高みかも
安倍朝臣虫麿の月の歌一首
雨隠もる 三笠の山を 高みかも 月の出で来ぬ 夜はふけにつつ
(巻6-980)
※雨隠もる:「笠」にかかる枕詞
三笠の山が高いからなのでしょうか、夜はふけていくのに、月が姿を見せてくれないのです。
雨隠もるは、笠の枕詞であるけれど、この歌を詠んだ夜は、実際に雨が降りそうな雲が多い空だったのかもしれない。
さて、なかなか姿を見せない月を待ち続けるのは、なかなか風情。
徒然草第百三十七段の「花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは。
雨に向ひて月を恋ひ、たれこめて春の行方知らぬも、なほあはれに情け深し」
を思い出した。
※作者は坂上郎女の従兄弟。
※続く「大伴坂上郎女の月の歌三首」と同じ宴と思われる。




