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我が背子に 恋ふれば苦し
同じ坂上郎女の、京に向かふ海路にして浜の貝を見て作りし歌一首
我が背子に 恋ふれば苦し 暇あらば 拾ひて行かむ 恋忘れ貝
(巻6-964)
※忘れ貝:二枚貝の片方だけになったもの。恋忘れ貝は、恋心を忘れることができるとされた貝。
貴方を恋して苦しくてたまりません。時間があれば、その恋を忘れるという貝を拾って行こうと思います。
坂上郎女は、大宰府滞在中、心を通わせられる親しい人が出来たのかもしれない。
海路を進みながら、もう一度逢いたいと思ったのではないか。
たまたま、忘れ貝を見かけて、それを拾えば都への長い道中、その思いを忘れることができるのかもしれないと思ったようだ。




