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隼人の 瀬戸の巌も
帥大伴卿の遥かに芳野離宮を思ひて作りし歌一首
隼人の 瀬戸の巌も 鮎走る 吉野の滝に なほしかずけり
(巻6-960)
※隼人の瀬戸:通称「黒瀬戸」。鹿児島県阿久根市の本土と天草諸島の南端長島との間の海峡で名高い景勝地。
有名な隼人の瀬戸の大岩も、鮎が元気よく泳ぐ吉野の滝の景色には、全く及ばない。
大伴旅人は、大宰府から吉野の宮滝を懐かしむ。
ここも景勝地であるけれど、私から見れば、吉野の風景にはかなわない。
なるべく早く帰りたい、大伴旅人の、そんな願いが色濃く詠まれた一首である。




