表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万葉恋歌  作者: 舞夢
300/1385

やすみしし我が大君の神ながら高知らせる印南野の

山部宿祢赤人の作りし歌一首 短歌を幷せたり


やすみしし 我が大君の 神ながら 高知らせる 印南野の 大海の原の あらたへの 藤井の浦に 鮪釣ると 海人船騒き 塩焼くと 人そ多にある 浦を良み うべも釣りはす 浜を良み うべも塩焼く あり通ひ 見さくも著し 清き白浜

                               (巻6-938)

反歌三首

沖つ波 辺波静けみ 漁りすと 藤江の浦に 船ぞ騒ける

                               (巻6-939)

 

印南野の 浅茅押しなべ さ寝る夜の日 長くしあれば 家し偲はゆ

                                (巻6-940)

 

明石潟 潮干の道を 明日よりは 下笑ましけむ 家近づけば

                                (巻6-941)



※印南野:播磨国印南郡の野。兵庫県加古川市から明石市にかけての丘陵地。

※大海の原:明石市西北部、大久保町あたり。行宮の所在地。

※鮪釣る:マグロは銛で突く場合もあるけれど、ここでは釣っていたらしい。

※藤井の浦:明石市藤江付近。反歌には「藤江の浦」とある。

※明石潟:明石の海岸。潮が引くと干潟が現れる遠浅の海岸を「潟」と言った。



我が大君が、神として立派にお治めになられる、印南野の大海の原の藤井の浦には、鮪を釣る海人の船が頻繁にに行き交い、塩を焼く人々が大勢集まっています。

この浦が素晴らしく豊かであるので、釣りをするのも当然のこと、浜が素晴らしいので、塩を焼くのも当然なのです。

何度も大君がお通いになられ、ご覧になられる理由も、実にこの清い白浜に、はっきりと見えております。



沖の波も岸辺の波も静かなので、漁をしようと藤江の浦に舟が頻繁に行き交っております。


印南野の浅茅を押しなびかせて旅寝する夜が幾日も続いたので、故郷の家が懐かしく思われてなりません。


明石潟の潮が引いた海辺の道を、明日からは心ひそかうれしく微笑み、歩くことでしょう、妻の待つ家が近づくので。



神亀三年秋九月の播磨国印南野行幸の時の歌。

大君を褒め、土地の風俗を褒めているけれど、そろそろ帰京が近づいたのだろうか。

妻が恋しくなって、帰る前の日は、うれしくて仕方がない。

実に素直な、羇旅歌と思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ