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万葉恋歌  作者: 舞夢
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好去好来歌

好去好来歌一首


神代より 言ひ伝て来らく そらみつ 大和の国は

皇神の 厳しき国 言霊の 幸はふ国と 語り継ぎ 言ひ継かひけり

今の世の 人もことごと 目の前に 見たり知りたり

人さはに 満ちてはあれども 高光る 日の大朝廷 神ながら 愛の盛りに

天の下 奏し給ひし 家の子と 撰び給ひて 

勅旨戴き持ちて 唐の 遠き境に 遣され 罷りいませ

海原の 辺にも奥にも 神留まり うしはきいます

諸の 大御神たち 船舳に 導きまをし

天地の 大御神たち 大和の 大国御魂

ひさかたの 天のみ空ゆ 天翔り 見渡し給ひ

事終わり 帰らむ日には また更に 大御神たち 船舳に 御手うち掛けて

墨繩を 延へたるごとく あちかをし 値嘉の岬より 大伴の 御津の浜辺に

直泊てに みふねは泊てむ つつみなく 幸くいまして はや早帰りませ



神代から語り伝えられてきた大和の国は、皇神の厳として素晴らしい国、言霊の豊かな国と、語り継ぎ、言い継がれてきました。

今の世に生きる人も、皆、ことごとく、そのことを目の前に見て聞いて承知していることであります。

この世には、これほど多くの人がいるのに、日継の朝廷の、神である帝のご寵愛の深さのままに、天下の政治を奏上された名家の子息として、あなた方をお選びになられ、勅旨を承り、遠く唐の国の境まで遣わされ、下向なされるので、海原の岸辺にも沖にも、鎮座なされ支配なされる数多くの大御神様たちは、船舳に立たれて先導なされ、天地の大御神たちは、中でも大和の大国御魂は、天の大空に天翔けり、御見守りなされるでしょう。

そして遣唐使の仕事が終わり、帰る日には、更にまた、大御神たちが船舳に御手を掛けられ、墨縄を引いたように、値嘉の入り江から大伴の御津の浜辺に向かって、一直線に御船は港に入り、泊まることでしょう。

つつがなくご出発なされ、早くお帰りになられてください。



天平5年(733)4月、山上憶良が、第9次遣唐大使として唐へ渡る丹比広成に贈った送別歌。

尚、山上憶良は、30年前の第7次遣唐小録として、入唐しているので、先輩として激励し、無事を祈った。

不安な往復の航路、異国の唐にいる時も不安。

そんな時に頼るのは、やはり神々。

「神々がお守りになるよ、心配なくでかけて、できれば早くお帰りなさい」

山上憶良の励ましは、この上ないものだったと思う。


尚、広成たちは、この励ましの効果があったのか、翌年11月に、種子島に帰着した。

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