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敬みて熊凝の為にその志を述べし歌に和せし歌六首(2)
たらちしの 母が目見ずて おほほしく いづち向きてか 我が別るらむ
(巻5-887)
常知らぬ 道の長手を くれくれと いかにか行かむ 糧はなしに
(巻5-888)
母の顔を見ることが出来ず、心をふさいだまま、どこの方角に向かって、私は別れて行くのだろうか。
見慣れず知らない長い旅路を、真っ暗な心のまま、どうやって歩いていくのだろうか、食べる物もなく。
「糧」は、冥途の旅に必要な食糧で、後世に益する善根。
その善根が無いというのは、両親より先に命を落とす親不孝との意味かもしれない。
この世では悲嘆と寂しさのなか、命を落とし、後世でも、また苦しむ。
実に哀しく辛い歌が続く。




