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万葉恋歌  作者: 舞夢
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敬みて熊凝の為にその志を述べし歌に和せし歌六首(1)

うちひさず 宮へ上ると たらちしや 母が手離れ 常知らぬ 国の奥処を 百重山 越えて過ぎ行き いつしかも みやこを見むと 思ひつつ 語らひをれど 己が身し 労しければ 玉鉾の 道の隈廻に 草手折り 柴取り敷きて 床じもの うち臥い伏して 思ひつつ 嘆き伏せらく 国にあらば 父取り見まし 家にあらば 母取り見まし 世間は かくのみならし 犬じもの 道に臥してや 命過ぎなむ

                                (巻5-886)


都に上るために、母の手を離れ、慣れなく見知らぬ他国の奥深く、数もわからないほど多くの山を、越えて過ぎました。

そして、いつの日にか都を見たいものだと、語り合っていました。

しかし、私は疲れてしまって苦しいので、道の曲がり角で、草を手折り、柴を取って敷き、それを寝床として横になり、このように嘆き伏しました。

「国にいるならば、お父さんが看病をしてくれるでしょう、お母さんが看病してくれるでしょう」

「しかし、全てが他人の世間とは、このようなものだったのでしょう」

「野良犬のように道に横になって、死んでしまうのでしょうか」



故郷の期待と両親の期待と不安を背負い、自分でも都を見たいと思い、難儀して見知らぬ山を何度も超えたけれど、病気になってしまった。

そして、あっけなく死に臨む。

家にいれば、両親が看病してくれるけれど、他人ばかりの世間では、ほぼ野良犬のように打ち捨てられて死んでしまう。


夏の暑い時期の道中であり、衛生状態が悪い古代では伝染病か、あるいは酷暑による熱中症か、いずれにせよ相撲人として国を代表するほどの健康で体が大きな若者を簡単に病死させるのだから、それらが予想できる。

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