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松浦県佐用比売の子が領巾振りし~(2)
足日女神の 命の魚 釣らすと み立たしせりし 石を誰見き
(巻5-869)
百日しも 行かぬ松浦路 今日行きて 明日は来なむを 何か障れる
(巻5-870)
神功皇后様が、魚をお釣りになろうとお立ちになった石を誰が見たのでしょう。
百日の距離もない松浦までの道。今日行って明日帰って来られるというのに何が邪魔をするのでしょう。
神功皇后が新羅出兵の成否を占い、玉島川の石の上に立って鮎を釣った故事(日本書紀)を引用し、大伴旅人氏の一行は、松浦川にて、その故事に基づく石を見ているのでしょうけれど、私(山上憶良)は留守番のため、見ることができないと、残念がる。
筑前から松浦へは直線距離で四十キロほどで、歌の通り、一泊二日の行程。
筑前国司山上憶良氏は、国司としての勤めがあり、同行は不可能だった。
置いてきぼりの、悔しさを素直に詠んでいる。
所要が出来て、社員旅行に参加できない寂しさにも、通じるものがある。




