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万葉恋歌  作者: 舞夢
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梅花の歌三十二首 (8)

梅が花 折りかざしつつ 諸人の 遊ぶを見れば 都しぞ思ふ

                 土師氏御道 (巻5-843)

妹が家に 雪かも降ると 見るまでに ここだも紛がふ 梅の花かも

                 小野氏国監 (巻5-844)

うぐひすの 待ちかてにせし 梅が花 散らずありこそ 思ふ児がため

                 筑前掾門氏石足 (巻5-845)

霞立つ 長き春日を かざせれど いやなつかしき 梅の花かも

                 小野氏淡理 (巻5-844)


梅の花を折り、髪にかざしながら、人々が楽しみ遊んでいる様子を見ていると、奈良の都が思い出されます。


妻の家に雪が降るのかと見間違うくらいに、この地でも梅の花が乱れ散ります。


鴬が待ち焦がれていた梅の花は、愛する人のために、散らないでいてください。


霞立つ春の長い一日。梅の花を髪にかざしておりますが、実に梅の花は心を魅かれます。



一首目は、土師氏御道の作。未詳。官名が無いので無位・無官。奈良の土師氏出身者と推定。尚、土師氏の里は菅原道真の出生地。おそらく平城京でも梅の祭りがあり、それを懐かしんだものと思われる。


二首目は、小野国堅の作。後に写経司史生を勤めた官人。

奈良の都での梅の祭りを懐かしんだ一首目を受けて、自分も愛する妻が懐かしくなったのかもしれない。


三首目は、門部医石足の作。梅の花の宴会が長く続くように願う歌。待ちかねていた鴬のためにも、愛する人、おそらく妻以外に、宴席に参加した全員のためにもの意味も含まれる。


四首目は、小野田守の作。後に太宰少弐などを勤める。宴の終わりを間近に迎え、なお梅の花を愛で続けたい心情を詠う。


※以上、「令和」の元号の由来となる大宰府での梅花の宴三十二首を訳してみた。


現代、このような華やかでなごやかな宴会があるだろうか。

一首ごとに、麗しき春、愛しき春を、梅の花と鴬などに託して、華やかに詠いあげる。

読んでいるだけでも、その人の心、閉ざされた心にも春が来る。

長く辛い冬を乗り越えて咲く可愛らしい梅の花の姿、鴬の姿が浮かんで来る。

この三十二首は、ただ単に千三百年前の宴の歌だけではない。

令和の時代が終わって、後世の人にも、長く語り伝えて欲しい、至上の春の宴の歌と思う。



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