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万葉恋歌  作者: 舞夢
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奈良某人と大伴旅人の書簡

伏して来書を辱くし、具に芳旨を承りぬ。

忽ちに隔漢の恋を成し、また、抱梁の意を傷ましむ。

唯だ羨はくは、去留に恙無く、遂に雲を披くを待たまくのみ。


歌詞両首 大宰師大伴卿


龍の馬も 今も得てしか あをによし 奈良の都に 行きて来む為

                         (巻5-806)

現には 逢ふよしも無し ぬばたまの 夜の夢に を継ぎて見えこそ

                         (巻5-807)

答へし歌二首

竜の馬を 我は求めむ あをによし 奈良の都に 来む人のたに

                         (巻5-808)

直に逢はず あらくも多く しきたへの 枕去らずて 夢にし見えむ

                         (巻5-809)



謹んでお手紙をありがたく受け取り、その御趣旨を重々承知いたしました。

たちまちに、天の河を隔てる彦星のような恋しい気持が増して、また橋梁を抱いて人を待った故事の様に切なさを感じます。ただ、旅の貴方と留まっている私が、平穏な日々を過ごし、お互いの住む場所を隔てる雲が開けて、再会できる日を待つばかりです。


太宰帥大伴卿の歌 二首

竜の馬を、すぐにでも欲しく思います。

奈良の都に行って戻って来るため。


現実には、逢う方法などありません。

夜に見る夢に、いつも現れて欲しいのです。


返歌二首

竜の馬を求めましょう。

奈良の都に来ようとする貴方のために。


直接に逢えない年月が長くなりましたけれど、枕辺を離れず、貴方の夢に現れたいと思います。


※隔漢の恋:織姫の渡河を待つ彦星の恋心。

※抱梁の意:橋の下で逢引きをする約束を守り、水かさが増しても橋柱を抱いて、ついには水死した尾生(荘子)の故事による。


最初の文は、奈良の某人にあてて、大伴旅人が書いたと言う説と、奈良の某人が大伴旅人に書いた説との二種類がある。

奈良の某人も、男性官僚説と、女性説(女性皇族)がある。

ただ、訳者としては、女性皇族説を取る。

奈良に住む女性皇族からの手紙を受け取り、大伴旅人が当時の男性知識人として、漢文調で最初の文を奈良に住む女性皇族に送り、「隔漢の恋」と「抱梁の意」を伝えたと捉えるほうが自然に思う。


いずれにせよ、遠隔地で通じ合う思いになるけれど、電話も電子メールも無い時代。

手書きの手紙だけが、心を通じ合う証。

もどかしいと思っても、それ以外に手段はない。

だからこそ、心温まる手紙を受け取れば、伏して拝みたくなるのだと思う。

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