大伴宿祢家持の、更に大嬢に贈りし歌二首
大伴宿祢家持の、更に大嬢に贈りし歌二首
都路を 遠みか妹が このころは 祈ひて寝れど 夢に見え来ぬ
(巻4-767)
今知らす 久迩の都に 妹に逢はず 久しくなりぬ 行きてはや見な
(巻4-768)
都への道が遠いためなのだろうか、このごろは夢に出て来て欲しいと願って寝ても、貴方は出て来てくれない。
天皇が新しくお治めになる久迩の都にいて、貴方に逢えずに長い期間が過ぎてしまった。本当は奈良に戻って早く貴方に逢いたい。
相手が自分のことを思っているからこそ、相手が自分の夢に出て来ると思われていた時代、寝る前に祈っても出てこなくなれば、実に不安になる。
天皇に従って、新都久迩京にいるしかない家持の本音は、とにかく旧都の奈良に戻り、坂上大嬢に逢い、お互いの気持ちを確認したいということ。
帝に従うのは、大伴家の筆頭として当然ではあり、従わなければ大伴家の存在にも危険が生じてしまうことは、家持自信よく理解している。
しかし、それでは、気持がおさまらない。
そのような思いが、わかりやすく詠まれていると思う。




