大伴坂上郎女の、女子大嬢に贈りし歌二首
大伴坂上郎女の、竹田の庄より女子大嬢に贈りし歌二首
うち渡す 竹田の原に 鳴く鶴の 間なく時なし 我が恋ふらくは
(巻4-760)
早川の 瀬に居る鳥の よしをなみ 思ひてありし 我が子はあはれ
(巻4-761)
目の前に広がる竹田の原で鳴き続ける鶴のように、私の気持ちは貴方から離れることはありません。
流れが急な川の瀬にいる鳥のように、頼る相手がいなくて沈んでいる貴方が、不憫でなりません。
竹田の庄は、現奈良県橿原市にある耳成山の北東の地域で、大伴家に関係する所領と思われる。
坂上郎女は何らかの所用で、竹田の庄に滞在している間も、佐保(平城京付近)に残してきた娘大嬢が心配でならない。
おそらく、大伴家持との恋に悩み、また噂にも悩む娘を残してきてしまったことへの後悔なのか。
娘を気遣う母親の愛情がよく表れている二首と思う。




