更に大伴宿祢家持の、坂上大嬢に贈りし歌15首(4)
思ひ絶え わびにしものを なかなかに 何か苦しく 相見そめけむ
(巻4-750)
相見ては 幾日も経ぬを ここだくも 狂ひに狂ひ 思ほゆるかも
(巻4-751)
かくばかり 面影のみに 思ほえば いかにかもせむ 人目繁くて
(巻4-752)
貴方への想いをあきらめて、寂しく落ち込んでいたのに、どうしてまた苦しい思いをして、逢瀬を重ねることになったのだろうか。
貴方のお顔を見てから、何日も経っていないのに、本当に我を忘れて狂おしく、貴方を恋しく思うのです。
これほどまでに、貴方の面影ばかりが心に浮かぶのです。本当にどうしたらいいのかわかりません。人目がうるさくて、逢うことも、ままならないのに。
大伴家持と坂上大嬢の別離の期間は、約8年間と言われている。
その間に、大伴家持は様々な女性と浮名を流すプレイボーイ。
坂上大嬢としても、再び言い寄られても、「はい、わかりました」とは、簡単には言えないはず。
少しは苦しめて、家持の本気度を試したいと思うのも、女性としては当たり前なのだと思う。
ただ、坂上大嬢も実は、家持が好きで好きでたまらない。
ある程度までは、冷たい態度を取るけれど、逢えば深い交わりとなる。
家持も、それでますます、逢いたくなってしまう。
二人をつなぐ赤い糸は、長い別離の期間を経て、ますます引きあうようになる。




