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大伴宿祢家持の、娘子に贈りし歌(2)
千鳥鳴く 佐保の川門の 清き瀬を 馬打ち渡し 何時か通はむ
(巻4-715)
千鳥が鳴く佐保川の渡しの清き瀬を馬を渡り、いつか通いたいと思う。
関連歌として、大伴坂上郎女が藤原麻呂と贈答した歌が指摘されている。
・佐保河の 小石ふみ渡り ぬばたまの 黒馬の来る夜は 年にもあらぬか
(佐保川の小石を踏み渡って黒馬の来る夜が、一年中あればいいのに)
・千鳥鳴く 佐保の川瀬の さざれ波 やむ時もなし 我が恋ふらくは
(千鳥がよく鳴いている佐保川の川瀬のさざ波と同じで、私の貴方への恋心は途絶えることはありません)
男を待つ坂上郎女は、佐保川を渡って来るのを待つけれど、やはり大伴家の男子の恋愛としては、自宅付近佐保川を渡り、恋する相手に出向いていくのが、妻問い婚の基本。
妻問いをして当初は妻の家に同居、やがて独立するにしても、相手に受け入れられるまでは、佐保川の清き瀬も渡れない。
 




