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垣穂なす 人言聞きて
丹波大女娘子
垣穂なす 人言聞きて 我が背子が 心たゆたひ 逢はぬこのころ
(巻4-713)
人々の噂が高い垣根のように取り巻いてうるさいので、私の愛しい人がためらって、逢ってくれないこの頃です。
この時代の逢瀬は、日が沈んだ後に男が女の家に通い、日が昇って明るくなる前に帰ってゆくというまさに人目を避けたまさに秘め事。
自分と相手の名前が恋の浮名として人々の噂になることを非常にためらう風潮があった。
また現代のようにセキュリティとか防音設備が無い時代、結局は人に知られてしまい、男女の恋の噂があっという間に広まってしまう。
丹波大女娘子たちの恋もまた、そんな人々の噂のひとつ。
その恋が成就したのか、垣根(噂)を乗り越えられたのか、気になるところでもある。




