230/1385
み空行く
安都扉娘子の歌一首
み空行く 月の光に ただ一目 見し人の 夢にし見ゆる
(巻4-710)
空に浮かぶ月の光のもとで ただ一度お逢いした貴方が 夢にあらわれます
訳などいらない美しい歌と思う。
美しい月が浮かぶ夜空の下での、ただ一度の逢瀬。
ただ一度だからこそ、美しい月夜には、その愛しい人との逢瀬も思い出す。
そして、その愛しい人が夢に出て来ると、愛しい人が自分を恋ていると思い、ますます慕情はつのる。
※古代では、夢に愛する人が出て来ると、愛する人が自分を恋ていると信じられていた。




