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巫部麻蘇娘子の歌(1)
わが背子を 相見しその日 今日までに わが衣手は 乾る時もなし
(巻4-703)
あなたにお逢いした日から、今日まで、私の衣の袖は、涙に濡れて乾くことがありません。
巫部麻蘇娘子は、中臣氏に属し、中臣氏が神祇を職としていたため、巫女の可能性が高い。
歌を贈った相手は、大伴家持説が有力。
あちこちの女性を渡り歩く大伴家持には、自分の気持ちが通じていない。
だから、「お逢いした日から、時間が経っていますけれど、ずっと泣いていますよ、衣の袖も濡れて乾きません」と、恨むように詠みかける。
さて、真実の恋なのか、それとも多情な家持に呆れた「戯れの歌」なのか、それは不明。
詠んだ人本人に聞くしかない。




