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かくしてや なほや退らむ
大伴宿祢家持の、娘子の門に到りて作りし歌一首
かくしてや なほや退らむ 近からぬ 道の間を なづみ参来て
(巻4-700)
大伴宿祢家持が女性の家を訪れて、その門で詠んだ歌一首
こうして来てみても やはり帰ることになるのでしょうか。
近くはない距離を苦労しながら参上したというのに。
※なづむ:行き悩むこと。
この歌の娘子は伝未詳。
多くの女性から愛の歌を贈られる大伴家持が、実はそのような女性ではなく、別の女性に思いを寄せていて、相手にもされなかったらしい。
おそらく「門」は、言葉を交わす最初の機会で、しかし、それすらないということ。
苦労して接触しようと試みたけれど、寸前で相手には、さらに強いガード。
大伴家持以上の存在が、その女性には既にいたのかもしれない。
まさに恋されることと、恋することとは、別のことになる。




