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大伴三依 照る月を闇に見なして
大伴宿祢三依の別れを悲しみし歌一首
照る月を 闇に見なして 泣く涙 衣塗らしつ 乾す人なしに
(巻4-690)
美しく照る月など全く見えない。
闇夜と思うほどに泣き続けて、衣まで濡らしてしまった。
乾してくれる人などはいないのに。
照る月とは、手の届かないような気高い人なのだろうか。
その人を想い続けて、ひどい失恋を味わう。
悔しくて悲しくて、目も開けられないほど、泣き続ける。
その涙で服も濡れるけれど、乾してくれる人も、なぐさめてくれる人もいない。
涙に濡れるのは、服だけでない、心も同じ。
何回も読み直すと、心にズンと響く歌。




