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中臣女郎 大伴宿祢家持に贈りし歌(4)
直に逢ひて 見てばのみこそ たまきはる 命に向かふ 我が恋やまめ
(巻4-678)
※たまきはる:命にかかる枕詞。
直接にお逢いした時にだけ、命をのもを懸けた私の苦しい恋が止むのでしょう。
これも、なかなか逢瀬を遂げられない苦しさに満ちている。
それでも、逢瀬の時だけは、命を損なうような、恋の苦しさからは解き放たれるのでしょうけれど。
ただ、逢瀬を遂げたとしても、次に逢う時までは、また苦しい恋に沈まなければならないことは、自分自身わかっている。
それにしても、新興勢力の藤原氏「中臣の女」と歴史ある大伴家の御曹司。
家持は、中臣家(藤原氏)から、恐れられ地方官として、送られる時期が多かったけれど、その時期の歌なのだろうか。
中臣の女が特定されていないだけに、謎が深まる。




