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中臣女郎 大伴宿祢家持に贈りし歌(1)
をみなへし 佐紀沢に生ふる 花かつみ かつても知らぬ 恋もするかな
(巻4-675)
佐紀沢に生えている花かつみのように、かつては知ることもなかった恋をするようになってしまったのです。
※中臣女郎:伝未詳。
※をみなへし 「佐紀沢」に掛かる枕詞。
佐紀沢は、奈良の佐紀沢。
※花かつみ:未詳。花菖蒲、あるいは花の咲いた薦との説。
中臣女郎は、佐紀沢のあたりを歩いていて、人知れず咲く花を見た。
そして、それから大伴家持に対する、人知れずの恋心を思い出したのだろうか。
中臣家と大伴家、協調も対立もあり、なかなか恋愛の成就は難しかったのかもしれない。




