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真玉つく をちこち兼ねて
大伴坂上郎女
真玉つく をちこち兼ねて 言は言へど 逢ひて後こそ 悔いにはありと言へ
(巻4-674)
将来のことをいろいろと、言葉巧みにおっしゃられますけれど、お逢いしてから後のほうこそ、後悔しきりと言われるではありませんか。
※真玉つく:立派な玉をつける。裕福な玉。「緒」との同音により「をちこち」にかかる枕詞。
※をちこち:「をち」は遠方、「こち」は近辺なので、その意味を時間に転じて、現在から将来までの意味となる。
貴方は、「私に寄り添ってくれれば、その時から、ずっと将来まで素晴らしい幸せを約束します」などと、甘い言葉をかけてくるけれど、世間では、そういう甘い言葉を言う人は、寄り添ったら最後、後悔するとの噂なのです。
「甘い言葉には気を付けなさい、と言われております」そのものの歌。
これは最近の流行歌にも、よく出て来る。
男女の愛の永遠のテーマの一つなのだと思う。




