月読の
湯原王の歌一首
月読の 光に来ませ あしひきの 山も隔りて 遠からなくに
(巻4-670)
和せし歌一首 作者を審らかにせず
月読の 光は清く 照らせども 迷へる心 思ひあへなくに
(巻4-671)
※月読:月齢の意味から、月の異称に転じた。
※あしひきの:山にかかる枕詞。
湯原王の歌一首
月の光を頼りにおいでください。山を隔てるほどの遠い道ではないのですから。
湯原王の歌に和した歌一首 作者は明確にしない。
確かに月の光は、清らかに道を照らしています。
しかし、私の気持ちが迷ってしまい、決められないのです。
二首とも月見の宴で詠まれたらしい。
一首目は、湯原王が女性の立場で、月も明るいのですし、距離も離れていないので、おいでくださいと、呼びかける。
二首目は、おそらく宴席の誰か。
それは月の光は明るいけれど、迷って決められませんと、女性の呼びかけをかわしている。
おいそれと、女性の誘いには乗らない。
やんわりとお断り。
別の女の家に行く心でもあるのか。
貴方の家になど、行きたくないと、断られた女の心理は、どうなのだろう。
ただ、あくまでも宴席での戯れ歌となれば、一同が大笑いになったことも、想定できる。




