198/1385
坂上郎女 恋ひ恋ひて
恋ひ恋ひて 逢へる時だに 愛しき言 尽くしてよ 長くと思はば
(巻4-661)
恋慕い続けて、ようやく逢える時だけでも、優しい言葉をたくさんかけてください。
貴方が末永くと思うならば。
なかなか逢えない関係、遠距離恋愛も含めて、ようやく逢えた時ぐらいは、優しい言葉をかけ続けて欲しい。
この次、いつ逢えるかわからない。
私との関係を末永く続けようと思うのなら、そうして欲しいのです。
とにかく思いっきり甘えたい心があふれている。
※参考
恋ひ恋ひて そなたになびく 煙あらば いひし契りの はてとながめよ
(貴方を恋し、その恋のあげく、貴方に私を焼く野辺の煙が 届くかもしれない
それは 貴方と交わした契りの果て、そのものと 眺めてください)
式子内親王(新後撰1113)
同じ「恋ひ恋ひて」を初句にしても、恋に希望がある坂上郎女の歌と、絶望のまま死を迎える式子内親王の恨みのような歌の違い。
歌の世界、男女の世界は、実に深く広い。




