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坂上郎女 思へども
思へども 験もなしと 知るものを なにかここだく 我が恋ひわたる
(巻4-658)
恋い慕っていても、何の兆しもないと知っていながら、なぜ私はこんなに強く恋い続けるのだろうか。
恋い慕うだけで、成就の兆しもない。
しかし、恋心の激しさは、おさまらない。
「験」という言葉を使うからには、神仏に願をかけたのだろうか。
その神仏も、どうも「験」を恵んでくれるような兆しがない。
それでも、自分自身に疑問を感じながらも、恋慕い続けずにはいられない。
この歌も、実にわかりやすい恋の名歌と思う。




