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坂上郎女 思はじと
思はじと 言ひてしものを はねず色の 移ろひやすき 我が心かな
(巻4-657)
貴方のことを思わないと口に出しては見たけれど、私の心は変わりやすいのです。
「はねず色の」の「はねず」は、庭梅と想定されている。
それを使って染めた紅色が褪せやすいので、「移ろふ」の枕詞になる。
相手の男に何らかの難しい要因があって、例えば浮気とか、周囲を囲む女性が多いとか、待つだけの女としては、「もう知りません、あきらめました」と声に出して言うけれど、そんな簡単に思いを捨てられない。
かくて、すぐに、心は変わってしまう。
これも恋愛関係を経験した人ならば、よくわかる歌ではないだろうか。




