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大伴坂上郎女 ひさかたの
ひさかたの 天の露霜 置きにけり 家なる人も 待ち恋ひぬらむ
(巻4-651)
この頃は、露霜が降りる時期になりました。
この寒さの中、家にいて待ち焦がれている人もいるでしょう。
大伴坂上郎女は、大伴旅人の異母妹。家持の叔母。
この歌は、大伴旅人の赴任中の大宰府に下向している時のものとされている。
奈良平城京に残して来た二人の娘、大嬢と二嬢が、「家なる人:家で待つ人」となる。
尚、大嬢は大伴家持に、二嬢は大伴宿祢駿河麻呂に、それぞれ嫁いでいる。
遠く離れた大宰府の地が、露霜がおりるほどの寒さとなった。
坂上郎女は、平城京に残して来た二人の愛娘が、この寒さの中、どうしているのかと気になったようだ。
そうなると「待ち恋ひぬらむ」は、家で待つ二人の娘だけではない、坂上郎女自身も、強く逢いたいと思う。
母親として娘を愛し、心配する心は、どんな時代にも変わらない。