大伴駿河麻呂と大伴坂上郎女(2)
大伴宿祢駿河麻呂の歌一首
相見ずて 日長くなりぬ このころは いかにさきくや いふかし我妹
(巻4-648)
大伴坂上郎女の歌一首
夏葛の 絶えぬ使ひの よどめれば 事しもあるごと 思ひつるかも
(巻4-649)
大伴宿祢駿河麻呂の歌一首
お顔を見ることのない日が、長くなりました。
このごろはいかにお過ごしなのでしょうか、とても貴方のことが気がかりです。
大伴坂上郎女の歌一首
ずっと絶え間なく届けられていたお手紙が届かなくなったので、何か事件でもあったのかと、心配しておりました。
※夏葛の:絶えずにかかる枕詞。
求婚されている娘の母としては、大伴宿祢駿河麻呂からの手紙が滞っても、また不安。
娘の心も落ち着かないし、駿河麻呂は親族でもあるし、世間体もある。
大伴宿祢駿河麻呂としては、何かにまぎれて手紙を出さなかっただけなのかもしれないけれど、大伴坂上郎女はそうはいかない。
それで、「お変わりないですか」の手紙が届いて、ホッと安心した感じを、そのまま歌にしているのである。




