大伴駿河麻呂と大伴坂上郎女(1)
大伴宿祢駿河麻呂の歌一首
ますらをの 思ひわびつつ 度まねく 嘆く嘆きを 負はぬものかも
(巻4-646)
大伴坂上郎女の歌一首
心には 忘るる日なく 思へども 人の言こそ 繁き君にあれ
(巻4-647)
大伴宿祢駿河麻呂の歌一首
立派な一人前の男である私が、様々に思い嘆いているのです。
その嘆きを貴方は気づくことはないのでしょうか。
大伴坂上郎女の歌一首
心から忘れ去るような日など無く、心配し続けてはおりますけれど、人の噂が絶えない貴方なのです。
大伴駿河麻呂の祖父と大伴坂上郎女の父は兄弟なので、親戚の二人ということになる。
そして大伴駿河麻呂は、大伴坂上郎女の娘の二嬢に想いを寄せていたらしい。
駿河麻呂は、娘の母に「娘を恋している、恋に苦しんでいる」と歌を送るけれど、その母坂上郎女は、「それはわかっていて心配はしております、ただ貴方は様々な女性に声をかけているのでは?噂がいろいろ聞こえてくるのですが」と皮肉を込めて返す。
これも焦らしの技術なのだろうか、興味深いものがある。