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紀女郎の怨恨の歌(2)
今は我 わびそにしける 息の緒に 思ひし君を ゆるさく思へば
(巻4-644)
今、私は辛くて仕方がありません。
生きる頼みと思っていた貴方を手放すと思うと。
息の緒は、慣用句で「自分の命のように大切に、頼みにしていた」という意味。
「ゆるす」は、緩める、手放すの意味。
一心に愛していた人の心が、自分を思っていはいないと気づき、辛くてしかたないけれど、諦めるしかないと悟る。
失恋、失愛の原因が、采女への横恋慕による失脚なのだから、寂しさ、辛さは、より増したのだと思う。




