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山口女王 わが背子は
わが背子は 相思わずとも しきたへの 君が枕は 夢に見えこそ
(巻4-615)
わたしのことなど気にもかけない貴方であっても、あなたの枕は夢に見えて欲しいのです。
この時代、夢に誰かが出て来るのは、その人が自分を深く思ってくれている証だと信じられていた。
また、枕にはその使用者の魂が宿るとの言い伝えもあった。
山口女王は、大伴家持が自分の夢にも出てこないのは、愛されていないからとわかっている。
けれど、それでは辛い。
だから、せめて夢には出て来て欲しい、そして手枕をして欲しいと、切実な想いを歌に詠んでいる。