163/1385
笠女郎 恋にもそ
恋にもそ 人は死にする 水無瀬川 下ゆ我痩す 月に日に異に
(巻4-598)
※水無瀬川:水が表面には現れずに伏流する川。
恋のためにも、人は死んでしまうのです。
伏流水のように人目には見えず、ひそかに慕う恋心から、私は痩せてゆくのです。
日々、そして月ごとに。
恋い慕う家持からは、何の音沙汰もない。
恋心と、それがかなわない辛さは、他人には見せたくないし、見せない。
しかし、その辛さゆえ、日々、月ごとに、私は痩せていく。
「恋のためにも、人は死んでしまう」、それは嘘偽りではありませんよ。
本当のことなのです。
おそらく、恋の辛さのため、食事も満足に摂れなくなっているのだと思う。
家持には家持なりの事情もあると思うけれど、苦しむだけの笠女郎に、「少ししでも声をかけてあげたら」と、同情心が芽生えてしまう。




