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秘めなければならない逢瀬
賀茂女王の歌一首
大伴の 見つとは言はじ あかねさし 照れる月夜に 直に逢へりとも
(巻4-565)
見たとも言いません、明るい月夜に、直接お逢いしたとしても。
賀茂女王は、冤罪に巻き込まれて自害した長屋王の娘。
この歌を詠んだ時期は、まだ大犯罪人の娘。
相手は、大伴家の三依。
「大伴三依を見た」の意味と、三依の名前の「大伴御津:美しい浜辺で有名」の意味を掛けている。
迷惑をかけたくないので、明るい月夜の御津の美しい浜辺で、直接お逢いしても、つまり共寝しても、その事実は認めませんと詠む。
かくして、二人の逢瀬は、秘めなければならない逢瀬となる。




