大伴坂上郎女の歌二首
黒髪に 白髪交じり 老ゆるまで かかる恋には いまだあはなくに
(巻4-563)
山菅の 実成らぬことを 我に寄そり 言はれし君は たれかと寝らむ
(巻4-564)
黒髪に、白髪が混じる老年になるまで、こんな切ない恋には、いまだ出会わなかったことがないのです。
結局、結ばれないと、私と何かあるかのように噂された貴方は、今頃どなたと一緒に寝ているのでしょうね。
大伴坂上郎女は、大伴旅人の旅人の異母妹。家持の叔母、姑。大嬢・二嬢の母。
坂上郎女の通称は坂上の里(現奈良市法蓮町北町)に住んだことから。
初めは、穂積皇子と結婚。皇子の薨去後、一説に宮廷に留まり命婦として仕える。
この頃、首皇太子(聖武天皇)と親交を持ったようで、後年個人的に歌を奉っている。
養老年間、藤原麻呂に娉われるが、養老末年頃、異母兄大伴宿奈麻呂の妻となり、坂上大嬢・二嬢を生んだ。
宿奈麻呂の死後、旅人を追って大宰府に下向する。
帰京後は佐保邸に留まり、一家の取りまとめ役、また氏族の巫女的存在として、家持の母代りとして、大伴氏を支えた。
額田王以後最大の女性歌人であり、万葉集編纂にも関与したらしい。
本人の歌は、万葉集に長短歌84首を所載。
女性歌人としては最多で、全体でも家持・人麻呂に次ぐ第三位の数である。




