大き海の 水底深く 思ひつつ
大き海の 水底深く 思ひつつ 裳引き平しし 菅原の里
(巻20-4491)
※菅原の里:奈良市菅原町。石川女郎の家があった里。菅原神社(菅原道真の産湯がある。菅原寺は東大寺大仏殿の模型。
右の一首は、藤原宿奈麻呂朝臣の妻石川女郎の、薄愛にして離別させられ、悲しみ恨みて作りし歌なり。年月未だ詳らかならず。
※藤原宿奈麻呂朝臣:藤原宇合の次男。反仲麻呂派。後の藤原良継。また、相模国防人部領使。
※石川女郎:伝未詳。
大きな海の底のように深く思っていながら、(あなたがお越しにならないのを)怨んで、裳を引きずりながら、何度も行ったり来たりしたので、菅原の里が、すっかり平らな地面となってしまいました。
夫の愛が薄れ、捨てられ怨んだ女の恨み歌である。
大海の底より深く愛していたのに、夫は自分への愛が薄れて、全く通って来ない。
私は待ちわびて、いつ来るかと、家の周りを、着物の裾を引きながら。何度も行ったり来たりした。
そのために、菅原の里の。でこぼこ道も、すっかり平らになってしまった。
※三形王の宴会で歌われた古歌。尚、三形王の邸宅も菅原の里にあった。




