天平宝字元年十一月十八日、内裏に於て肆宴(しえん)したまひし歌二首
天平宝字元年十一月十八日、内裏に於て肆宴したまひし歌二首
※天平宝字元年十一月十八日:西暦757年11月18日。(太陽暦の1月2日頃)
※内裏に於て肆宴:豊明節会。公式行事。
天地を 照らす 日月の 極みなく あるべきものを 何をか思はむ
(巻20-4486)
右の一首は、皇太子の御歌。
※皇太子:大炊王。(舎人皇子の子)後の淳仁天皇。
いざ子ども 狂わざなせそ 天地の 堅めし国そ 大和島根は
(巻20-4487)
右の一首は、内相藤原朝臣の奏せしものなり。
※内相藤原朝臣:藤原仲麻呂。
天地を照らす、太陽と月のように、天皇の御代は、永遠に続くものなのです。
何も、心配などは、いらないのです。
さあ、皆さま、おかしな行動はすることは、しないで欲しい。
この大和島根の国は、天地の神々が造り固めた国なのですから。
この年6月28日に起こった橘奈良麻呂の乱は、すでに決着済み。
そこで豊明節会で、天皇家賛美の歌を詠む。
ただ、ここで天皇賛美の歌を詠んだ藤原仲麻呂も、やがては乱を起こす。
それを思うと、どこまでの心を込めたのか。
天皇家など、私欲のために、「利用するだけの道具」。
仲麻呂の、強引な歌いぶりの底に、そんな傲慢な心が潜んでいる。
そんな思いを持ってしまうのは、私だけだろうか。




