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朝夕に 哭のし泣けば 焼太刀の
藤原夫人の歌一首。浄御原の宮に天の下知らしめす天皇の夫人なり。字は氷上大刀自と言ふ。
※夫人:宮廷の女官の職名。皇族以外出身者の最高位。定員は3人。天皇の妃。
※氷上大刀自:藤原鎌足の娘。妹の八百重姫と共に、天武天皇の夫人となった。
朝夕に 哭のし泣けば 焼太刀の 利心も我は 思ひかねつも
(巻20-4479)
※焼き太刀の:心にかかる枕詞。焼き太刀ような、しっかりとしたの意味もある。
朝にも夕方にも、声をあげて泣いていますので、まともな心ではありません。
天皇崩御における挽歌と思われる。
※兵部大丞大原今城が伝え詠んだ歌の一首。
ただし、氷上大刀自は、天武天皇崩御前に亡くなっているので、大原今城の記憶間違い説もある。
天武天皇には大原大刀自と言う名の別の妻妾がいたのので、その誤伝のようだ。
※天平勝宝八歳(756)11月23日、式部少丞大伴宿祢池主の宅に集っての宴会で、大原今城が古歌を披露した。




