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堀江漕ぐ 伊豆手の舟の 梶つくめ
堀江漕ぐ 伊豆手の舟の 梶つくめ 音しば立ちぬ 水脈速みかも
(巻20--4460)
堀江より 水脈さかのぼる 梶の音の 間なくぞ奈良は 恋しかりける
(巻20-4461)
舟競ふ 堀江の川の 水際に 来居つつ鳴くは 都鳥かも
(巻20-4462)
右の三首は、江の浜にて作りしものなり。
堀江を漕ぎ進む、伊豆手の舟の、絶え間ない楫の音が聞こえて来る。
水の流れが速いからなのだろうか。
堀江から、水脈をさかのぼる舟の楫の音が絶え間ないように、奈良の都を恋する思いも絶え間がないのです。
多くの舟が漕ぎ競う堀江の川の水際に、飛んで来て鳴いているのは、都から来た鳥かもしれません。
いずれも、難波で詠んだ、故郷平城京への望郷歌。
作者は、大伴家持。




