同じ月の十一日、左大臣橘卿の、右大弁丹比国人真人の宅に宴せし歌三首
同じ月の十一日、左大臣橘卿の、右大弁丹比国人真人の宅に宴せし歌三首
※同じ月の十一日:天平勝宝七歳(755)5月11日(太陽暦では6月24日頃)
※左大臣橘卿;橘諸兄。
※右大弁丹比国人真人:太政官で、大蔵、宮内、兵部、刑部を受け持つ右弁官の長。二年後に橘奈良麻呂の変に連座し、伊豆に流罪となった。
我がやどに 咲けるなでしこ 賄はせむ ゆめ花散るな いやをちに咲け
(巻20-4446)
右の一首は、丹比国人真人の、左大臣を寿ぎし歌。
賄しつつ、君が生ほせる なでしこが 花のみ訪はむ 君ならなくに
(巻20-4447)
右の一首は、左大臣の和せし歌
あぢさゐの 八重咲くごとに 八つ代にを いませ我が背子 見つつしのはむ
(巻20-4448)
右の一首は、左大臣が、あじさいの花に寄せて詠みし歌。
我が庭に咲くなでしこに、気配りなら何でもいたしましょう。
だから、決して散ってはなりません。
いつまでも、若々しく咲いていて欲しい。
右の一首は、丹比国人真人が、左大臣橘諸兄を褒めたたえた歌。
あなたが、様々な気配りをしながら、大切に育てた。なでしこですが、あなたは、なでしこの花だけに好意をよせる人ではないでしょう。
右の一首は、左大臣が和した歌。
あじさいが、様々な色に咲くように、いつまでもご健勝を願います。
あじさいを見れば、貴方と思って偲ぼうと思います。
右の一首は、左大臣があじさいの花に寄せて詠んだ歌。
左大臣橘諸兄を自宅に呼び、宴会。
出席に感謝する意味で、(しっかりと気を配ってお仕えさせてもらいますので)いつまでもお元気でと、寿ぐ。
左大臣橘諸兄も、客とそて感謝。
あなたは、花だけでなく、いろいろ気を配ってくれると、喜ぶ。
さらに、あじさいも、太陽暦の6月24日で、庭に咲いているのを見て、歓び、今後あじさいを見たら、貴方と想い、偲びますと、喜んで見せる。
二年後に橘奈良麻呂の変に連座し、伊豆に流罪となったことを考えると、丹比国人真人橘家に縁の深い人。
まだ、平和な時期の宴と思うべきか。




