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三月三日、防人を検校せしときに、勅使と兵部の使人等と、同じく飲宴して作りし歌(2)
ひばり上がる 春へとさやに なりぬれば 都も見えず 霞たなびく
(巻20-4434)
ふふめりし 花の初めに 来し我は 散りなむ後に 都に行かむ
(巻20-4435)
右の二首は、兵部少輔大伴宿祢家持。
すでにひばりが舞い上がる春になっております。
都も見えなくなるような、霞がたなびいております。
桜のつぼみがふくらむような、花の初めの時期に(難波津)に来た私は、桜が散ってから、都に帰ることになるでしょう。
勅使安倍沙弥麻呂が、都での残務が忙しいので、ひばりになって空を飛んで、都と往ったり来たりしたいと詠んだことに応じた歌。
大伴家持は、その勅使安倍沙弥麻呂に同感。
都では、もう春霞ですよ(いいなあ、と羨望)
でも私が帰ることが出来るのは、桜の花が散った後、と嘆く。
この二首も、諸国から集められた防人たちを確認、激励した後の酒宴の歌。
ひばりとか、桜とか、都に帰りたいと嘆くような、のどかな歌。
く泣く故郷から離され戦地に赴く防人の哀感は、全く詠まれていない。




