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昔日の防人の歌(5)
笹が葉の さやぐ霜夜に 七重着る 衣にませる 児ろが肌はも
(巻20-4431)
障へなへぬ 命にあれば 愛し妹が 手枕離れ あやに悲しも
(巻20-4432)
笹の葉が寒々と揺れる、こんな霜夜は、衣を七重に着るより温かい、あの子の素肌が、欲しくて仕方がないのです。
拒むことなど一切許されない、大君の命令なのです。でも、愛しい妻の手枕を離れて来てしまったことも、たまらないほど悲しいのです。
大君の厳命とはいうものの、無理やり故郷を遠く離れされ、寒い夜には、やはり妻の温かい肌が恋しい。
哀感がこもり、名歌。




