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昔日の防人の歌(1)
防人に 行く誰が背と 問ふ人を 見るがともしさ 物思ひもせず
(巻20-4425)
「防人として出発する人は、誰の旦那様ですか」と、聞く人がうらやましい。
もはや、何の心配もないのですから。
亭主が防人に選ばれてしまった妻の歌。
選ばれなかった家の妻は、のん気に「どこの旦那さんが選ばれた?」と聞きまわっているのを、実は、憎らしく思っている。
すごく素直な歌で、心理がよくわかる。
昔日がいつのことかは、不明。
過去の古い時期の防人の歌で、何らかの形で、残されて伝わっていた歌を、主典刑部少録磐余伊美吉諸君という下級役員が抄写し、大伴家持に贈った八首の第一首目。




