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韓衣 裾に取り付き 泣く子らを
韓衣 裾に取り付き 泣く子らを 置きてぞ来ぬや 母なしにして
(巻20-4401)
※韓衣:大陸風の衣装。防人服説もある。
右の一首は、国造小県の郡の他田舎人大島。
韓衣の裾に、むしゃぶりついて泣きじゃくる子供たちを置き去りにして、出発して来てしまった。
あの子たちには、もはや母親がいないのに。
万葉首中、最も悲しみを詠んだ歌ではないだろうか。
女親が、すでにこの世にいない、というのに、無理やり防人として、徴発してしまう村長の非情さ。
その徴発令に背けば、公開死罪となる、そんな過酷さもある。
その後、子供たちは、どうなったのだろうか。
男親は、無事に戻って来て、再会できたのだろうか。
とにかく読み返すごとに、哀感を覚える歌である。




